岩手県立
大学社会福祉学部人間福祉学科生涯発達支援系
担当教員:教授 米本清
【研究室の概要】
本研究室は多くの理工系学部とは異なり,大講座制の中の個人研究室という位置づけです。本学部は2学科,5教育系で構成されており生涯発達支援系に所属する教員は現在8人おりますが,音や聴覚に関連したテーマで指導にあたるのは1人だけです。指導対象となる学部生や大学院生は,学部の性格上,音響学にかかわる知識をほとんど持ち合わせていないことから,厳密な現象の検証よりも福祉領域や医学領域における臨床場面での応用を前提とした実験的アプローチに焦点をあてて研究を進めることを心がけています。また,聴覚医学関連の課題で共同研究を実施している地元の耳鼻科医師や本学所属の心理系教員などの応援も得て,学生指導,研究課題に取り組んでいます。
【研究室の具体的なテーマ】
・補聴機器の効果と難聴者への適合に関する研究:補聴器を中心とした補聴機器を難聴者の聴覚特性に適合させる方法を音響面と心理面の両側から追及することを目指した研究テーマです。多くの場合,補聴器装用によって語音明瞭度が良くなることに主眼を置いて適合しますが,必ずしも音質に満足しているわけではありません。そこで,補聴器を装着したHATSを通して得られた音源の音質を健聴者に主観評価させることで,さまざまな聞こえの難聴者が満足する音質の特性を探ろうとしているのです。
・視覚障害者の聴覚能力に関する研究:視覚に障害のある多くの方(特に全盲の方)は,反響音などの音情報を基に周囲の状況を把握しているといわれています。それゆえ,音は視覚によって多くの情報を得ている人に比べてより重要な情報源であるといえます。そこで,さまざまな条件下で,音源の方向感や微妙な音の変化の認知能力について晴眼者との違いを調べることで,音響信号の設置や街づくり,失明後の方の歩行訓練の評価などに生かすことを目標にしています。
社会福祉学部に所属していることから,福祉的な視点でものをとらえることで,技術者の勝手な思い込みや対象者への押し付けではなく,障害のある方にとって有用な福祉機器の開発に繋がるような研究を理想としています。
【研究室のPR】
本研究室では,写真にあるような無響室を独占的に使用できる環境にあり,学内のみならず地元企業との共同研究も実施しています。また,文系の大学院ですが博士後期課程もあり,社会人学生の方も増えてきています。